苦い文学

駅の秘密(3)

「日本、男、上下」

長いあいだ駅について思いを巡らせてきた彼らにとって、この暗号を解くのはさほど難しくなかった。「日本」というのは、駅の東改札口のことだ。なぜなら、駅には他に中央改札口しかなく、日本には東日本と西日本はあっても中央日本はなかったから。次に「男」。駅で男と女が問題になるとしたら、トイレ以外にありえない。

「上下」の解釈は難しかった。だが、彼らが東改札口のトイレの入り口に立ち、その両側の壁を見たとき、その答えは自ずと明らかになった。タイル張りの壁は下部が薄いグリーン、上部が白になっていたのだった。彼らは、駅員たちの注意をひかぬようこっそりと二色のタイルの境目の部分を調べていった。

やがてそれは見つかった。そのタイルを押すと、カチリと軽い音がして、隠し扉が開いた。階段が下へと続いている。彼らはすばやく忍び込むと早足で何段もの階段を降りていった。

底についた。懐中電灯で照らすと、ゴミ箱が並んでいる。彼らはカバンの中からペットボトルや空き缶を取り出すと、リサイクル用のゴミ箱に捨て、紙クズやお菓子の紙は燃えるゴミ箱に突っ込んだ。自分たちのゴミを捨ててしまうと彼らは、フードの男から渡されたビニール袋をひっぱり出した。しばしの間、どのゴミ箱に捨てようかと迷ったが、結局、燃えないゴミ箱の中に放り込んだ。