苦い文学

孤独なダンサーたち(3)

孤独なダンスを始めたのは彼が最初ではなかったというのは疑いようがない。もしかしたら、項羽にまで遡る可能性もある。だが、そうであっても、このダンスを踊りながら家の外に飛び出し、公衆の面前で夢中になって踊り続け、その姿が著名なコレオグラファーの目に止まることとなったのは、彼が最初であった。

その日、コレオグラファーは、駅から出てきたところだった。ロータリーを突っ切って向こう側の道へと渡ろうとしたとき、見知らぬ男が中央の空間で無言で踊っているのを目にしたのであった。はじめは若者がダンスの練習に興じているのかと見えた。いつもならコレオグラファーは軽く注意を向けながら通り過ぎるところだ。だが、そのダンサーがたったひとりであり、しかも、中高年であることに気がついて、軽くひっかかりを感じ、より意識を向けた。

そして、コレオグラファーは、この孤独なダンサーの異様な振り付けを見るやもはや動けなくなった。振り上げられた手、震えるその指先、開閉する両脚、素早い回転、それらの動きは、どれもダンスの文法に適ったものであった。どの動きもコレオグラファーは熟知してた。だが、異様なのは、それらひとつひとつの要素によって構築されたダンスが、彼の知るものとはまったく逆の効果を生み出していた。

彼にとってダンスとは身体の動きを通じた人間同士のコミュニケーション、喜びであり希望であった。だが、今彼が目にしているのは、あらゆる存在との関係を断つ拒絶と絶望、ダンサー自身の消失と虚無の現出にほかならなかった。