私たちの国では、いつの頃からか、熊が人里に現れ、人々を襲うようになりました。多くの人はこの危険で凶暴な獣を駆除すべきだと主張しました。ですが、熊はそもそも危険で凶暴なのですから、これは熊を絶滅させろといっているようなものです。
そこで、熊の駆除に反対する人々はこう言いました。そもそも熊を人間世界に慣らしたのは人間なのだから、熊を絶滅させるなどとはあまりに一方的ではないか、と。すると、駆除すべき派の人々は激昂しながら「では、熊に殺される人を見殺しにするのか」と言い返すのでした。
プリン博士という方が私たちの国にやってきたのは、そんなときでした。プリン博士は「もはや熊を殺す必要などないし、人も熊に殺されはしないだろう」と両派に向かって訴えました。「なぜなら、私のテクノロジーを使えば、熊に人間並の知性を与えることができるからだ。そうすれば、熊に言い聞かせるなど簡単だ」 反対するものはひとりもいませんでした。
この時から熊の知性化プロジェクトが始まりました。プリン博士の必死の努力の結果、ついに熊たちは人間並の知性を持つにいたったのでした。
熊たちは今や人間と同じように考え、感じることができるようになりました。そこで、人間はこう命じました。
「熊たちよ、人間を襲うのをやめよ」
すると熊たちはこう言いました。
「お前らに指図される筋合いはない。ガオー」
この日から、人間と熊の戦争が始まり、数え切れないほどの人が犠牲になっています。