日本に来たとき、びっくりしたことはたくさんありますが、とくに驚いたのは、電車の中が静かだということです。
私の国でも、電車がありますが、乗客たちはみんなうるさいのです。大声でおしゃべりする人もいれば、携帯電話で大声で話している人もいます。なので、日本の電車がとても静かなのが、なんとも不思議でした。
たまに大きな声で話している人がいますが、よく聞いてみると、日本語ではありません。この間など、電車のなかでうるさい人たちがいるかと思ったら、なんと私の国の言葉で話していました。恥ずかしくて思わずうつむいてしまいました。
どうして日本の電車は静かなのでしょうか。日本人がマナーを守るからだと聞いたことがあります。でもそうではないと思います。なぜなら、日本に長く住んでいると、マナーを守らない日本人もけっこういることがわかるからです。
私は、日本の電車が静かなのは、電車のなかでは日本人の声が互いに打ち消し合っているからだと思います。つまり、日本人には相手の声を打ち消すノイズキャンセリング機能が備わっているのです。
そればかりか、日本人は相手の存在をも打ち消すことのできる機能も備えているようです。そうでなければ、あんなひどい満員電車に乗れるわけがありません。日本人の目から見ればきっとガラ空きなのでしょう。
ガラパゴス諸島さながらに、独自の進化を遂げた日本人の生態は、まさに驚異のひとことです。