苦い文学

言語の変化

言語はどうして変化するのだろうか。いろいろな考え方がある。正しい言葉を使わないからだという人がいる。例えば「ら抜き言葉」がそうだ。「言葉の乱れ」が原因なのだ。

また、人間の楽をしたいという欲求が言語を変化させるのだという人もいる。ら抜き言葉も、「ら」を抜いても意思疎通に困らないのなら、なくてもいいじゃん、てことでなくなった、というのだ。

他にもいろいろな考え方があるだろうが、言語が変わるのは、結局のところ、人間が話しているからだ、ということになる。人間が変化を起こすのだ。

もっとも、変化が起きにくい環境がある。それは書き言葉だ。書くときは話すときよりも、文法や語彙の「正しさ」に注意が向くため、書き言葉はいつも話し言葉よりも古く、変化しにくい。

しかし、最近、いつだって正しい言葉を使い、楽をしたいという怠け心も起こさない存在が現れ、世界中のあちこちで話しはじめた。AI だ。

だから、AI の話す言語は変化をしない。するとしても、人間が話すほどではない。なので、たとえ、ネットに現れる新たな言葉遣いの学習を続け、絶えずそれを取り入れるとしても、AI の話し言葉は古く、変化しにくいだろう。

そのいっぽう、人間がますます AI に頼るようになると、人間の話し言葉も AI に似てくる。そしてその分、AI も変化を促すようなデータに出会うことがなくなり、ますます変わらなくなる。それをまた人間が真似をする。

これが繰り返されるうちに、人間の言語は変化を止めるだろう。