苦い文学

笑って長生き

人間は笑うと、ストレスホルモンが減少し、免疫力が高まる。ガンだって消えてなくなる。つまり健康になる。とすると、笑い続けることは健康であり続けること、そして、健康でいるかぎり人間は死なない……

この真理に到達したその日から、私の友人は笑い続けている。笑い声をたて、腹を抱え、涙を流し笑い続けている。もちろん、笑えることがそんなにあるわけではない。独自に考案した化学的な刺激により、可笑しみが脳内に醸成され、それが半永久的な笑いの爆発を引き起こしているのだ。

彼は始終笑い転げている。笑いすぎて何も食べることはできない。口に入れたものを吐き出してしまうのだ。なので、管を体に入れて栄養補給している。それに、ぐっすり眠れもしない。かわりにほんの数秒ほどの睡眠を数分おきにとっているだけだ。排泄も難しく、体はいつも汚物で汚れている。人間は笑いながら排泄するようにはできていないということがよくわかる。

私はしばしば彼のところに行き、時間を過ごす。もっとも、彼が私のことを認識しているかどうかはわからない。なぜならその目はまったくうつろだからだ。だが、ときどき、その目に苦悶と悲しみがよぎるとき、私は彼の視線を感じる。ほんの一瞬だが、殺してくれと目で語りかけられたような気がする。私はむしょうにおかしくなって、笑いが止まらなくなり、しまいには彼よりも大きい声で笑ってしまう