私たちの国には、外国人労働者はいません。昔はいました。ですが、私たちはこれがイヤでした。なぜなら、外国人は私たちの文化を尊重せず、好き勝手にふるまい、私たちの国を少しずつ破壊していったから。そこで、私たちはオレンジ党に投票して、外国人を追い出してもらいました。
でも、ひとつ大きな問題が残りました。私たちは外国人を働かせていましたが、その仕事をする人がもういなくなってしまったのです。私たちの国は深刻な労働力不足に陥りました。そこで、私たちが取り組んだのが、国産外国人の開発でした。
いくどかの失敗の末、私たちはついに純国産外国人労働者の生産に成功しました。今や、これらの国産外国人労働者は国内のあらゆるセクターで厳しく危険な労働に従事しています。私たちの生活は楽になりましたし、国産外国人労働者を海外にも輸出しているので経済的にも潤っています。
やがて私たちはこれらの外国人労働者にひとつの問題があるのに気がつきました。それは老化です。国産といえども、老人になります。そうなったら働けないので廃棄するしかないのですが、これにはかなりのコストがかかることが明らかになりました。私たちはさらなる開発を進め、ついにこの問題を克服しました。今では、国産外国人労働者はある時期が来ると脱皮してもとの若い労働者に生まれ変わります。
私たちが生み出しておいていうのもなんですが、国産外国人労働者は不思議な存在です。いつもは黙々と働いていますが、私たちが声をかけたりすると曖昧な笑みを浮かべます。いつも何を考えているかわからない顔つきですが、穏やかで礼儀正しいです。
ときどき、私たちは奇妙な想念にとらわれます。これらの国産外国人労働者にも大和魂があるのだろうか、などと考え込まずにはいられないのです。