しばらく前のことですが、私は、ニュースを見てとても驚きました。日本で貧富の格差が広がり、このままだと富裕層と貧困層だけになってしまう、というのです。
昔、日本は一億総中流と言われていました。なのに、その中流がごっそりいなくなってしまったのです。私は自問自答しました。自分は中流だろうかと。というのも、もし中流ならば、私は絶滅寸前の種ということになるからです。「ここにいるぞー!」とニュースに反論したかったのです。ですが、答えはノーでした。私は貧困層だったのです。
この日から、私の中流探しの旅が始まりました。知り合いを訪ね、知り合いの知り合いをさらに訪ね、中流かどうか聞いて回りました。ほとんどが悲しげに首を振って、貧困層だと答えました。ごくまれに「富裕層だ」とベンツの窓を開けて答える人もいました。ですが、中流と自認する人はひとりもいなかったのです。
いったい、中流はどこに行ってしまったのでしょうか? どこか遠い国を流れる川の中流のジャングルに潜んでいるのでしょうか。あるいはもう手遅れで、ニホンオオカミのようにとうに絶滅してしまったのでしょうか。せめて剥製でもみつかりはしないかと、今は各地の中学校を回っているところです。