ベルリン・フンボルト大学森鴎外記念館は、Friedrichstraße(フリードリヒ通り)駅から歩いていける。建物の上方に大きく「鴎外」と書かれているのですぐわかる。
記念館はこの建物の 2 階で、階段を上がって中に入ると、ドイツ人女性の責任者が現れて、館内の説明を日本語で簡単にしてくれた。無料だが、寄付を募っている、とアクリルの小さなボックスを示された。中には 10 ユーロ札と 5 ユーロ札が 1 枚ずつ、硬貨が少々入っていた。「写真を撮っていいですか」と聞くと、公開しないものならいいとのことだった。
それほど広くない館内をひとりで歩き回る。ドイツ留学中の鴎外や、帰国してからの作家活動についての説明や写真が展示されている。ここは鴎外が一時住んでいた場所で、当時の部屋も再現されている。窓際に書き物机があり、その上の壁には鴎外のデスマスクが飾られていた。これらは常設展で、別の 2 室では特別展示として 1880 〜 90 年代の東京の写真が並べられていた。
私がいる間には、他に来館者はいなかったが、責任者の知り合いらしい日本人がひとりやってきて、なにやら文化的な話をドイツ語でしていた。
記念館の入り口の脇に、売り物の書籍と絵葉書があった。絵葉書は 1 ユーロで、鴎外の肖像のものを 1 枚買った。例の寄付ボックスが目に入ったので、責任者の目の前でお金を入れて、文化の香り高いところを見せつけてやろうとしたが、財布には 10 ユーロ札(1,700 円)と小銭しかなかったのでやめた。その人も「こりゃまだ日本は普請中だ」と呆れたことだろう。