苦い文学

私は空腹だ

ベルベル人は北アフリカやサハラ砂漠の国々に広く住んでいる人々で、一般にベルベル語という言語を使っている。ベルベル語話者は、北アフリカでは、モロッコとアルジェリアに多くいるが、チュニジアにも南部にわずかながらいる。

先月チュニジアに滞在したさいに、ベルベル語話者にベルベル語について教えてもらう機会があった。私は言語に興味を持っているので、単語やら動詞の活用について教えてもらった。単語といっても基礎語彙で「頭」はなんというとか、「話す」はどうだというレベルだ。

あるとき「空腹だ」とか「喉が渇いた」とかはどういうのか、と尋ねたら、該当する単語を答えてくれた。教えてくれたのは 60 代の男性だったが、この単語について教えてくれたとき、こんなことを言った。

「ベルベル人の男は、腹が減ったとか、お金がないとか、そういうことはいわない」

ならなんでそんな単語があるの、と思ったが、それはともかく彼はこう続けた。

「ベルベルの村では男がそんなふうに弱みを見せるのは恥なのだ。だから、どんなに困っていても他人に、たとえそれが親戚でも助けは求めない」

「それで、どうするんです」

「そういうときは、妻子を集めて、部屋に入る。そして、内側から扉を塗り込める。そしてそのまま餓死するのだ」

あくまでもそういう気質だという話であって、これが本当にあったことかどうかは別問題だ。私としては本当でなければいいと思う。

ちなみに「私は空腹だ」とは「イッローザー」というようだ。積極的な活用を望む。