私たちが乗る飛行機の搭乗ゲートはなぜいつも遠いのだろうか? どうして出国審査カウンターを抜けたら、すぐゲートというわけにはいかないのだろうか? どうしてゲート 1 ではないのだろうか?
私たちは行先を知らせる表示を見て思う。「わっ遠そうだなあ」 その通り、確かに遠いのだ。私たちは、豪華な品々が並ぶ免税店を尻目に、長い回廊を歩き出す。表示の指すのは、通路のずっとずっと向こうの消失点の先だ。私たちは動く廊下をいくつも乗り継ぐが、その度にゲートが遠ざかっていくみたいに思える。私たちの脇を乗客を乗せた電動カートが何台も通り過ぎていく。どの車も乗客でいっぱいだ……。
そして、私たちの目の前に、エレベーターが現れる。それを下りた私たちは歓声を上げずにはいられない。空港のシャトルトレインの乗り場だったのだ。「ようやく!」と、いさんで乗り込む私たち。だが、トレインが運んで行った先には、変わり映えのしない長い回廊が広がっているだけだ……。
この頃には私たちの数はぐんと減っている。遥かなるゲートへの旅の途中でいく人もの仲間が落伍していった。彼らが託した搭乗券の束で、私たちのポケットはパンパンだ。
だが、いつかゲートに辿り着くときが来る。私たちは搭乗券を見せて、飛行機に乗り込む。シートに座り目を瞑り、長い旅の労苦と消え去った仲間たちの面影を思い出す……。
飛行機が飛び立つ。私たちは機内アナウンスによって、ただ別のターミナルに向かっているにすぎないことを知る……。