苦い文学

子どもたちを見守りたい

私の子どもの通う小学校に不審者が現れた。

その男は毎朝、小学校の校門の前に立ち、登校してくる子どもをじっと見守っていたのだ。黄色い腕章をつけ、小学校の名前の入ったベストを着ていたので、はじめは誰もが、PTA か地域の防犯活動かと思っていたが、そうではなかった。

腕章もベストも自作のニセモノ、男は関係者を装い、子どもたちに熱視線を注いでいたのだった。

学校は通報し、ただちに駆けつけた警官たちが男を連行した。その後しばらくして、私たちは男の動機を知ることになった。

男が子どもたちを付け狙っていたのは、日本が今、危ないからだというのだ。現在の日本は、少子高齢化と 40 年以上続く「失われた 30 年」のため、経済的に衰亡しつつある。「このままでは最貧国になってしまう!」 そんな恐れを抱くようになった男は、日本の衰退の程度を知るために、毎朝、校門の前で子どもたちの様子を窺うことにしたのだという。

「ええ、目なんです」と男は告白したそうだ。「貧しい国の子どもたちってのは、みんな目がキラキラしてるそうじゃないですか。あたしは、日本の子どもたちの目が輝き出してないかどうか、毎日、目を光らせてたんです」

そう語る男の目は、キラキラ輝いていたという。