苦い文学

最後の外貨の禍い(3)

これから書くことは、本題とはまったく関係ないように思える。だが、外貨の禍いの渦中において意外な意味を持つことになったこのことを語らぬわけにはいかない。

私は 8 月 14 日の 14 時の飛行機でドバイ経由で帰国する予定であった。空港には遅くとも 12 時に着いていればいいから、午前中は自由時間ということになる。そこで、私は荷造りを終えると、本屋に行くことにした。

その本屋はそれほど大きくないがきれいで、アラビア語、フランス語、英語の新刊が揃っている。朝の店内に入り、チュニジア文学と書かれた棚の前に立っていると、若い女性の店員が話しかけてきた。

「どういったものをお探しですか?」

私は特に知識があるわけではないのでこう言った。「なにかおすすめのものはありますか?」

店員は最近のものならこれ、現代の古典ならこれ、といくつか勧めてくれた。また、フランス語の本棚でも面白そうなものを教えてくれる。そのうちの一冊を見ると「アラビア語から翻訳」とある。フランス語に翻訳されるくらいならば、いい作品の可能性が高い。

「このアラビア語オリジナルはありますか」

「ありますよ」と持ってきてくれた。

ハスニーン・ベンアンムーという作家の作品だ。チュニジア歴史文学の巨匠らしい。私は店員の勧めるままにベンアンムーの本を 2 冊、すでに取り分けていた数冊の本の中に加えると、会計に向かった。ホテルに戻り、買ってきたばかりの本をスーツケースに放り込む。それからチェックアウトし、スーツケースを引いて空港に向かった。