苦い文学

最後の外貨の禍い(1)

7 月 30 日から 8 月 7 日の 9 日間に渡り、私は「外貨の禍い」という文をここに書いた。その末尾に「今回の帰国時になにが起きるかは、誰にもわからない」と私は書いたが、わかったのでここに報告をしたい。

「外貨の禍い」の内容は、チュニジアから出国するときに、ユーロやドルを持っていると出国審査を終えたポイントで尋問に遭い、没収されそうになるというものだった。国の定めた持出制限額は約 100 万円だが、尋問にさいしてこんなことはいわれない。ひたすら、外貨は持ち出しできない、あったら出せ、と攻められる。私としても、数万円の所持金を失うのはイヤなので、ドルやユーロを持っていても、「ありません」とだけ答える。すると、手荷物をすべて見せろ、とくるが、いくつか中身を取り出すとやがて追求は終わって「もういい行け」と追い払われる。

この全体のやり取りが不愉快であるし、この追求に遭う人と遭わない人がいるのも不公平だ。また、いずれ全額没収される目にあいかねないのではないか、との懸念もある。そこで、私は在日チュニジア大使館に問い合わせ、その結果、「出国時に没収される事例があるということ」およびそうならないために「入国時に外貨申請カウンターで外貨申告書をもらい、滞在中の両替証明書も保管しておくこと」という 2 点の情報を得たのだった。

「外貨の禍い」では、今年の 2 月にその外貨申告書を握りしめて出国に臨んだときの顛末を記したが、ここに「最後の外貨の禍い」として書くのは、冒頭の「今回の帰国時」、つまり 2 週間の滞在を終え、8 月 13 日に出国したときの体験談だ。