苦い文学

外貨の禍い(7)

外貨申請カウンター(Déclaration de Devises)というとどうすればいいのだろうか。

私はこのカウンターの列に並びながら考えた。人々はパスポートを持ち、紙幣の束をパスポートに挟んだり、紙に包んだりして持っている。お金を持っているということは、申告額が嘘でないということを確かめるために、係に渡すのだろうか。だが、カウンターでの様子を見るかぎり、申告者がお金を差し出している様子はなかった。なんにせよ、私は用心のため所持金は財布に入れたままにすることにした。

また、私はカウンターの壁に貼られたフランス語と英語の掲示にも目を光らせた。

「申告書を受け取ったら忘れ物に注意してください」

申告書を受け取ったうれしさに肝心のお金を忘れてしまう人がいるのだろう……

カウンターはアクリル板で仕切られ、窓口が 3 つあった。ちょうど両替所のような作りだ。どの窓口にも職員がいるので、列の流れは早い。やがて私の番になった。

窓口の係にパスポートの提示を求められ、それから金額を尋ねられる。答えると、確認のため紙切れに金額を書くように言われた。ドルと円のそれぞれの金額を書く。それから、紙幣を見せるように求められたが、見せるだけで実際に数えて金額を確認するわけではなかった。自己申告だ。すぐに申告書の作成が始まり、私は 10 DT を払って、一枚の申告書を受け取った。

チュニジア滞在中、私はこの申告書と、両替のたびに加わる両替証明書を大事に持ち続けた。そして、ついに帰国の日がやってきた。