苦い文学

外貨の禍い(6)

要するに、「外貨持込、外貨持出について」に書かれていることは、私には関係のないことだ。だが、こんな文書が出るということは、そこになにか意味があるはずだ。

「チュニジア入国時に、手持ちの現金等の申告をしていなかったために、出国時にそれらを当局に没収される事案が発生しております。」 

その後に書かれているルール云々よりも、大事なのはこの最初の一文だ。大使館の助言も考慮に入れると、「額に関わらず手持ちの現金等の申告をせよ」ということなのだ。

さて、私がチュニジアに着いたのは 2 月 22 日のことだ。飛行機を降りて、入国審査の列に並ぶ。周りを見回しても、外貨申請カウンターはない。ただ、長い列に並んでいるうちに私は、柱に貼られたポスターに気がついた。小さな文字で書かれているのでよくわからないが、新しい法律が施行されて、外貨の持ち込みがどうのこうのと読める。例の「外貨持込、外貨持出について」と同じ内容のようだ。この法律のせいで、以前にはなかったことが起こるようになったのだ。

やがて私の番が来て、カウンターの向こうの審査官にパスポートを差し出す。ホテルの予約確認書の提示も求められるので、携帯の中のファイルを見せる。審査が無事に終わり、パスポートが返される。私はこの機会を利用して、外貨申請カウンターについて審査官に尋ねた。すると、この先にあると教えてくれた。

入国審査の次は保安検査だ。これが終わると、手荷物受取場の広い空間に進む。そして、私はついに見つけた。それは、手荷物受取場から空港制限エリア外に出る出口の脇にあった。カウンターの上部にフランス語で Déclaration de Devises、英語で Currency Declaration と書かれている。その前に人々が並んでいた。

私はまず手荷物ターンテーブルで待つ乗客たちの群れに加わり、自分の荷物を受け取ると、そこに向かった。