苦い文学

外貨の禍い(1)

私はそれほどいろいろな国に行ったことがあるわけではないが、チュニジアはとても良い国だと思う。道の舗装は凸凹で、雨の後には汚い水が澱んでいるし、仕事がなくて若い人は苦労してるしで、さまざまな問題に直面してはいるが、それでも心優しい人々が多く、食べ物もとてもおいしい。そんなわけで今年の夏も私はチュニジアに行くのだが、そういう私にもひとつだけ、チュニジアでとてもイヤなことがある。

それは旅のいちばん最後のとき、チュニスの空港から帰途に着くために出国する時に起こる。

ここで、チュニジアの出国の手続きについてまずまとめておく必要がある。他の国とほとんど変わらないと思うが、おおよそこんな具合だ。

まずはカウンターでチェックインだ。搭乗券をもらいスーツケースなどを預ける。次は搭乗券とパスポートを提示して、セキュリティ・ゲートを通過。すると、出国審査の広間に出る。そこにはいくつかのカウンターが並んでいて、人々はその前で列を作っている。その列に並んでいると、自分の番が来る。審査カウンターにパスポートを出してスタンプが押される。そして、そのカウンターを通過し、その先にあるセキュリティチェックに並ぶ。そこで手荷物検査とボディチェックが終わると、無事、出国手続きは終了。あとは免税店で買い物をしたりして、搭乗時間まで自由に過ごすだけだ。

このプロセスの中で、私がいちばんイヤで、また非常に腹立たしいことが起こる。どこかというと、審査カウンターを出た直後、セキュリティ・チェックの直前だ。つまり出国したのかしてないのか定かでないキワキワの空間で起きるのだ。