日本人ファーストの党が政権を勝ち取ったとき、誰もが「本当の日本を取り戻すことができる」と欣喜雀躍した。
そして日本人ファーストの党は、私たちが期待した通りの政党だった。することなすこと日本人ファーストだったのだ。外国人は追放か処刑だし、なりすまし政治家も追放か処刑だ。日本人を貶してきたメディアと学術会議は A4 用紙で簀巻きにして日本海溝にボチャンだ。例の GHQ 謹製の憲法だって改憲どころの騒ぎじゃない。廃憲だ。これからは日本人ファーストが法律だ。日本人の日本人による日本人のための日本がここに実現したのだ。
そんなある日、政府から私たちのところに一通の通知が届けられた。
「日本人ファーストではないとの嫌疑につき直ちに出頭するように」
「これはなにかの間違いだよ」 私たちが我こそファーストとばかりに当局に駆け込むと、取り調べもなにもなく逮捕。由緒正しい日本人だといくら主張しても、日本人ファーストではない疑いの一点張りだ。裁判もなく有罪の判決が出た。
今、私たちはど田舎の収容所に入れられている。どんなに日本人だと言っても出してくれない。それどころか殴られる始末。
「日本人ファーストの国が日本人を殴るのか!」と怒鳴ると、看守たちは「よく聞け! ここは日本人の国じゃない! 日本人ファースト人の国だ!」と笑いながら死ぬまで殴る。日本人ファースト人ファーストだったのだ。
収容所では、朝の4時から夜の11時まで強制的に働かされる。私たちが作るのは米と野菜だ。純国産の食材を日本人ファースト人の食卓にお届けしています。