苦い文学

第三次世界大戦

アメリカがイランを攻撃したとき、人々は「第三次世界大戦が始まった」と言い出した。

これに対して、別の人々は「第三次世界大戦はまだ始まっていない」と反論した。これは局地的な紛争に過ぎないというのだ。

また別の人々は別の角度から反論した。

「第三次世界大戦は始まっていないし、決して始まらない。なぜなら、第二次世界大戦の頃とは、世界のあり方も人の考え方も異なるのだから、第二次世界大戦と同じような意味で世界大戦はもう起こりようがないのだ」 そして、こう付け加えた。「次に起こるのは、シン世界大戦だ」

こうした動きに対して「もうとっくの昔に第三次世界大戦は始まっているのに、いまごろそんなことを言っているとは!」と憤慨する人が現れた。この一派の一部が過激化し「今は第五十三次世界大戦だ」と主張するに至った。

第三次世界大戦についてどのような立場を取るかは、いつのまにか、大きな政治問題となっていった。というのも、どんな形にせよ「起こった」状態のほうが都合のいい政治家と、「起こっていない」ほうが都合のいい政治家がいたからだ。

そんなわけで「起こった」派と「起こっていない」派との論争は激化し、いつしか第三次世界大戦に発展していった。