苦い文学

危険なアクティビティ

海外旅行に行くたびに保険をかけているが、申し込むときに旅行の目的を選択しなくてはならない。そのときに危険なアクティビティをしないということについても確認を求められる。危険なアクティビティとはなんだろうか。ネットで調べると、スカイダイビング、登山、探検などが出てくる。私は冒険家ではないので「しない」にチェックを入れる。今回のベルリン旅行も同様だった。

そのベルリン滞在中に、とてもいい古本屋がある、と教えてもらった。Antiquariat Carl Wegner という。住所を頼りに行ってみると、ショーウィンドーにいかにも古くて味のある本が並べられている。勇を奮って店内に入る。重々しい皮の装丁の本が天井まで所狭しと並べられている。200 年前の本など当たり前という感じで、もっと古い本もたくさんありそうだ。

お店の人が声をかけてくれたので、関心のある分野をいうと、英語のものはこれしかないですね、と検索してパソコンで見せてくれた。しかし、私はドイツ語でも良いものがあれば買おうと思っていたので、その本棚を教えてもらった。

3段目に面白そうな本があった。いわゆる亀の子文字の本もある。上の段を見ていくと3段上ぐらいから天井のあたりまでの棚にも興味深い本が並んでいるのが見えた。私はお店の人に頼んで、鉄の脚立をその本棚の前まで動かしてもらった。

脚立は2メートルはある。段に足をかけると軋む。おそるおそる最上部に上がる。もう立つのがやっとだ。それでも、なんとか私は棚の本をじっくりと調べた。本を引っ張り出したり、棚に戻したりするたびにふらつき、足を踏み外して床に落ちそうな気がした。

危険なアクティビティの「する」にチェックを入れるべきだったろう。