ベルリン自由大学で開催されたセム語方言学会議(Semitic Dialectology Conference)では、29 の口頭発表が行われた。そのうちひとつを除いて、どれも面白いものだった。ここに、素人の私にも説明しやすいものをいくつか紹介したい(ただし正確かどうかは別。なお、タイトルと発表者は Semitic Dialectology Conference で検索すれば見つけることができる)。
・オマーンの南アラビア語であるジッバーリ語には、「男の詩」と呼ばれる短い詩がある。それは葬儀で遺体を運ぶときや、家を作るときなど、きつい労働をするときに男たちが歌う歌で、話し言葉と違う。生活形態の変化もあってこの種の詩形は失われつつあるとのこと。
・アルジェリアの南部の砂漠にガルダイヤという町がある。そこに古くから暮らすユダヤ人の集団がおり、チュニジアのジェルバ島とモロッコのアラビア語方言に影響されたアラビア語を使っている。女性と男性で方言差があり、女性の方が革新的な形式を用いている。これらのユダヤ人は現在イスラエルに移住しており、調査はそこで行われた。
・トゥロヨ語は現代アラム語のひとつ。もともとはトルコやシリアにわたる地域で話されていたが、迫害や虐殺の結果、世界に散らばった。スウェーデンに大きなコミュニティがあり、そこでもトゥロヨ語が用いられている。このコミュニティの中にはトゥロヨ語が母語でない人もいるが、同じ迫害の記憶を共有しているため、あえてトゥロヨ語を話すようになった人もいる。そうした人の言語の特徴についての報告。
・エチオピアにはアラビア語に次ぐセム語の話者が存在し、文字言語として公的な地位を与えられている。また、方言もたくさん存在するが、これら重要な言語を調査・研究する人はあまりにも少ない。
ということのなので、ぜひみなさん行ってください。