苦い文学

トーマス&ブライアン

ベルリンの街を歩いていたら、大きな本屋があった。入って探索していると、トーマス・マンの特設コーナーがある。生誕150周年ということらしい。『魔の山』や『ブッデンブローク』などの長編の中に “Der Tod in Venedig” のペーパーバックを見つけた。『ヴェニスに死す』だ。

短い小説だし、翻訳でも読んでいるので、買おうかと思ったが、私のなきに等しいドイツ語力を慎重に検討した上で、結局やめた。これほどの小説ならば、日本でも容易に買えるはずだし、そもそも読みもしない本を買うのはバカげている。

本屋を出て、再び街歩きに出る。首都ということもあるのだろうが、あちこちでイベントやコンサートの広告を目にする。知らないミュージシャンも多いが、ジェスロ・タルやデュランデュランなど、知ってる名前にでくわしたりすると楽しい。

ぶらぶら歩いていると、ショーウィンドーの中の大きなディスプレイに見覚えのある顔が映し出された。ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンだ。まさかベルリンでライブでもするのだろうか? しかし、認知症で引退したと聞いたが……と一瞬思ったが、“Tod(死)” の一語でニュース速報だということに気がついた。

……にしても、やっぱり “Der Tod in Venedig” 買っとくかな、旅の思い出になるし……。