苦い文学

喫煙できる場所

私は昔タバコを吸っていたが、やめてもう何年にもなる。しかし、最近、苦しいことがあって、タバコでも吸わずにはいられないと、コンビニに駆け込んで、タバコとライターを買った(そして値段に驚かざるをえなかった)。

外に出て、封を切り、一本取り出して口に咥える。ライターをつけ、タバコの先に火を向けた瞬間、私は周囲の視線に気がついた。私がタバコを吸っていたときは、路上ならどこでも吸えたが、今はもう違うのだ。私はタバコをしまい、喫煙できる場所を探して歩き出した。

公園、路地、裏通り……どこを探しても、吸えそうな場所はなかった。そこで駅に行くと、駅の外に、薄汚れたガラスに囲まれた喫煙所があった。中に入ると、タバコの煙と、灰皿でくすぶるタバコのイヤな匂いが鼻を突いた。そこに閉じ込められ、口をすぼめてタバコをむさぼる喫煙者たちは、惨めだった。

私は喫煙所を出て、別の場所を探し始めた。すると、駅の近くで喫煙可の喫茶店を発見した。心弾ませながらそのドアを開ける。だが、そこで目にしたのは、喫煙所と変わり映えのしない侘しい光景だった。私は引き返して外に出た。

私はなにも惨めな気分になるためにタバコを吸おうとしているのではなかった。広い空を見ながら、煙を思いきり吐き、悲しみを解消したいのだ。そんな場所はどこにあるのだろうか。私はなおも探し続けた。

日本中を歩き回ったが、ついに見つからなかった。中国のとある山奥ならば喫煙できるという噂を聞きつけ、私は中国に渡った。現地の人さえ足を踏み入れぬ辺境を旅すること数週間、ついに広々とした野原を見つけた。ここなら大丈夫と、タバコに火をつけたとたん、伝説の野人がやってきて、私は追い払われた。