「自分のやったことはパワハラだとちゃんと認定してほしい、その一心です」 そう語るひとりの男が、国と被害者を相手取って裁判を起こしました。
男は現在、傷害罪などに問われ起訴されていますが、自分の犯罪行為については否定していません。にもかかわらず、男は冤罪だと主張しています。
男「なぜなら、まったく間違っているからです。私はパワハラをしたのです。これは単なる傷害罪ではありません。パワハラによる暴力事件です」
記者「パワハラだ、と訴えておられるその理由はなんでしょうか」
男「私は社会的地位があり、高収入なんですよ。そうしたパワーある人間が行う暴力行為が、パワハラでないわけがないでしょう。パワハラはパワーある富裕層のみに許された特別な犯罪なのです。そんじょそこらの貧乏人や弱者男性のセコい犯罪行為と一緒にしてほしくないというのが正直な気持ちです。国は、高額納税者である私の意見を尊重すべきです。それが民主主義ではないでしょうか」
男は、まるでパワーを誇示するかのように選りすぐりの弁護団を結成し、弁護士たちに罵声と暴言を浴びせながら、ともに裁判を戦ってきました。
そして、今日、判決の日———裁判所から勝訴の紙を掲げた弁護士が走り出てきました。男の行為がパワハラと認定された瞬間でした。
「長くつらい戦いでした。このように勝利を勝ち取ることができたのも、ひとえに俺様のおかげだ」とパワハラ男は喜びを語りました。