苦い文学

クマ・サガル LIVE IN TOKYO (5)

午後6時になったとき、ステージにネパール人の男女が上がり、ネパール語で話し始めた。ステージの背後には、大きなスクリーンが設置されていたが、そこに今回の公演のスポンサーが次々と映し出されている。ゴールド・スポンサーのなんとか協会の代表の誰々、シルバー・スポンサーのなんとかレストランのオーナー誰々、といった具合で、面白いのはネパールの日本語学校も協賛に加わっていたことだ。

二人の男女はおそらく今回の公演のスポンサーについてなど話しているのだろう。その後、女性の歌手がステージに上がり、カラオケで2曲歌った。有名な人なのか知らないが、その曲は確かに有名なようで誰もが声を合わせて歌っていた。

そして、再び、ステージは無人となった。振り返ると会場は満員だ。キャパは 1,500 人というが、間違いなくそれくらい入っている。私は最前列にいたからその景観に圧倒された。その観客たちから「クマ・サガル!」コールが湧き上がる。クマ・サガルは会場の後ろのどこかにいて、ステージに上がるには、これらの大観衆をかき分けてやってこなくてはならない。

もしかしたら怖気ついたのではないか? それとも危険すぎてそのうち解散となるのではないか?

それから40分ぐらい待ったろうか、もう午後7時、というときだった。大きな歓声が上がった。いよいよやってきたのだ。観客たちは、クマ・サガルたちが通り抜けるその道筋に沿って携帯を掲げた。撮影しているのか、それともライトで照らそうというのか……いくつもの携帯の画面のそれぞれに小さい世界が映し出され、幻想的な光景が作り上げられた。