苦い文学

国産パンダ

日本の動物園から、次々とパンダが消え去っています。中国に相次いで返還されているためです。このままでは日本からパンダがいなくなってしまう、そんな危機感から、私は、国産パンダの開発を進めてきました。ですが、それはそう簡単な仕事ではありませんでした。

はじめは、日本の熊の胴体と頭を、国産の優れた漂白剤で白くすれば、簡単にパンダができると考えていました。ですが、実はそれだけではダメだったのです。問題は食生活の違いでした。日本の熊は絶対に笹を食べようとしませんでした。笹団子までは食べさせるのに成功したのですが、それ以上は無理でした。

もはやこれまで、と諦めかけていたときでした。私はふと目にしたニュースで、ある日本人の存在を知りました。その人は熊のいない県である千葉県を「熊あり県」にするために、自ら熊になろうとしているということでした。

これを見た私は「自らがパンダになるしかない」と覚悟を決めました。まずはパンダの生態を徹底的に学ぼうと、さっそく中国に渡り、四川省の保護区に向かいました。ところが、そこで現地の公安に逮捕されてしまったのでした。

パンダをじっくり観察し、パンダの着ぐるみを着てその動きを真似していた私を、中国政府は不当にも逮捕したのでした。

幸い、すぐに釈放されたのですが、強制退去を余儀なくされました。

私はこれは反スパイ法による逮捕だと確信しています。でも、この逮捕は実はラッキーでした。なぜなら、私はついに真相に辿り着いたからです。

考えてもみてください。パンダになろうとしている無実の人間をスパイだと捕まえるなんて、おかしいではありませんか。ですが、ここに秘密があるのです。つまり、もしかしたら、わたしは本当に中国の国家機密に近づいていたのかもしれないということです。ええ、はっきり申し上げれば、中国のパンダはもともと人間だったのです。

そうです。人間がパンダになることは可能なのです。近いうちに、みなさんの前にパンダとしてお目にかかれる日が来ると確信しています。