午後の語りコースは、竹本越孝先生で、題材は『卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)』の「木遣音頭の段」。「命の恩人平太郎と夫婦になった柳の精お柳の子別れを描く」というもので、私は知らなかったが、有名な場面らしい。
はじめに先生が、鶴澤駒治先生の三味線をつけて、語ってくださったが、さすがに迫力のある声だ。この段を、参加者全員で先生の真似をしながら少しずつ実際に語っていく。正座してお腹に力を入れ、声を正面に「ぶつける」要領ということで、みんな大きな声を出したが、お腹で出すというのが難しく、私は咳き込んでしまった。
語りは、詞(人物のセリフ)、地合(メロディ)、イロ(詞と地合の中間)からなり、その区別が重要だ。さらに、詞なら人物に合わせた口調もじっくり考えなくてはならない。また、地合の調子というか、伝統的なリズムも、今の音楽の感覚でやると、すぐに先生のお手本とずれてしまうので難しい。この義太夫のリズム感覚を身につけるのはそうとう大変そうだ。
私は浄瑠璃というとほとんど読むばかりだが、こうやって自分でやってみると、読むだけではわからないことがたくさんあることに気づかされ、面白いと思った。
あと、楽しかったのは、ときおり先生が、芸についての話をされたことで、鶴澤駒治先生が血を流しながら練習していたとか、八十を超えて体力的に衰えた師匠でも義太夫を語ると元気になって食欲が出てくるとか、義太夫でもなんでも日本の伝統音楽は正座でないと力が入らないとか、同じ正座でも語る方は姿勢を変えたりすることもあるが、三味線の方はずっと同じ姿勢なので大変だとか、こういう話は実際聞いていて飽きないが、これもよかった。
さて、体験コースの後は、5月から全8回の入門コースもあるということで、私もいちおう申し込んである。