苦い文学

続々男の星座

義太夫一日体験教室の会場は、赤坂見附にある豊川稲荷東京別院の文化会館だ。体験教室はお昼を挟んで開催されるので「軽食を用意してきてください」と書かれていた。

そして、私がお昼のために持ってきていたのが、前日買ったお稲荷さんの残りだった。これはいかなる神慮によるものであろうか。正座と足の痺れを恐れていた私にとって吉兆というべきであろう。

時間があったので、私はおみくじを引くことにした。百円を木箱に投入し、木の筒を振り、みくじ竹を出す。二十二番だ。棚から該当するおみくじをとる。

「第二十二番 吉 このみくじにあたる人は、こゝろ正直にして人のいつはりにのりて云々」

ざっと読んだが、正座については一言も触れられてはいなかった。だが、託宣というものはそう簡単にはわかるものではない。私はもう一度じっくり読む。

「くるしみありたる後次第によろしきかたちなり」

「よろしきかたち」とは正座のことだろうか? だが、そのとき、別の言葉が目に飛び込んできた。

「待ち人おそし」

これだ。

長いあいだ待つということは、痺れを切らすということだ。私の運命は正座で痺れるに定まった。(つづく)