苦い文学

地獄

一流の人はみな人格者ばかりだ。いや、心がやさしく、人間的にも優れているからこそ、トップの座にのぼりつめたといっていい。

そして、二流三流、その下の下流はといえば、卑しく、悪どい連中ばかりだ。というのも、もしもこれらの輩に、ほんのかけらでも徳というものがあれば、そんな底辺で燻っているはずなどないのだ。

下流の人々は妬みでいっぱいだ。「一流の人間が名声も、富も、才能もすべて独占してしまうなどずるいではないか」 そこで、一流の人間が失敗するようにいつも呪いをかけている。

この呪いがけっこう効くのだ。一流の人々が、パワハラ、セクハラ、性暴力などで落ちぶれていくのはこのせいだ。一流の人々は人格者なのだから、そんなことをするはずがないのに、こんなことが起こるとは、下流の人間たちの呪い以外ないではないか。

下流の人々は「自分たちは社会正義を実現した」と公言して憚らない。

そこである人が、下流の人々にこう尋ねた。「社会正義というけれど、その実現のために、女性たちがパワハラや性暴力に苦しまねばならないとは、理不尽ではないのか」

すると、下流の人々はこう答えた。「ええ、ですので、私たちは女ばかりでなく、男も性暴力の被害に遭うように、バランスを心がけています」

すでに地獄になったのか、とその人は感心したそうだ。