私たちはバブル崩壊以降、なんでも膨らむものに警戒するようになってしまった。なぜなら、それは必ず破裂するからだ。バブルの破裂があまりにも衝撃的だったため、網で餅を焼くのさえ怖くなってしまった。アツモノに懲りてナマスを吹くありさまだったのだ。
経済のどんなに小さな膨らみでも、私たちはもうドッキリ番組の巨大風船のようにハラハラしてしまう。大慌てで叩き潰さずにはいられないのだ。
もう膨らむ経済はゴメンだ。だが、どうしたらいい? 私たちは考えに考えた末、ついに結論に到達した。経済を回すのだ。それ以来、私たちはシャカリキになって経済を回してばかりいる。
そんなとき、中国でどんどん富豪が誕生し、裕福な中国人が爆買いにやってきた。経済を回すのにかかりきりで飲まず食わずの私たちは、回す手を休めて、こうつぶやいたものだった。
「かわいそうに、そのバブルはきっと破裂するのに」 そして、私たちは再び経済回しに取りかかった。だが、それから何年経ったことだろうか。中国のバブルはいっこうに破裂せず、その気配すらない。そのいっぽう、経済を回す私たちの腕は痩せ細り、目も回ってフラフラしている。
もしかしたら、と私たちは考えた。私たちは間違っていたのかもしれない。バブルとは崩壊するに決まったわけではないのでは? そうだ。破裂しないバブルもあるのだ!
私たちはもう経済を回すのはコリゴリだ。回せば回すだけ、経済は碾き臼のように私たちの体を粉砕していくのだから。やはり、私たちにはバブルしかないのだ。
バブルのトラウマはもう終わりだ。アツモノに懲りるのはやめよう。そして、ナマスを吹くその息で、世界一のバブルを膨らませよう。