苦い文学

三枚つづりの紙

私たちは再び外に出された。待合所で座って待っていると、いつの間にか支配人と客室係は姿を消していた。待合所もだんだんと人が少なくなり、ついに私とコートを着た女性だけになった。忘れられたのかと不安になり、横の部屋で仕事をしている署長から見える場所にある椅子に移った。

その部屋からは、さっきの怒鳴り声が断続的に聞こえてきた。こうした人の相手もしなくてはならないのだから、署長は忙しいのだ。だから、私は催促せずに黙って座っていた。

しばらくすると署長から声がかかった。私が横の部屋のデスクの前に行くと、彼は文書を見せた。それはホッチキスで閉じられた3枚の紙で、アラビア語が書かれている。

「ここと、ここ」と私に金額を確認するようにいう。3万円と20ドルとちゃんと書いてあった。文書にサインをしろというので、一枚一枚に署名をする。

これをもらっていいのか、と聞くと「違う」と言って、署長は席を立った。

私は署長がいない間、デスクの前の椅子に座って、ラミネートされたピンク色のIDカードが何枚かデスクの上に無造作に置かれているのを見たり、その所有者たちであり、おそらくはそのひとりは怒鳴り声の主でもある3人の男が部屋の奥に座っているのをチラと眺めたり、壁に「禁煙」「携帯使用禁止」と張り紙がされているのを眺めていた。

署長が若い警官を連れて戻ってきた。「彼について行くのだ」と私にいうと、若い警官にあの3枚の紙を渡した。