苦い文学

署長室の対決

いきなりの対決の設定に、盗難証明書が欲しいだけの私は絶句した。それに、こんなふうに当事者同士を対峙させるやり方が、まともな警察のやり方なのかどうか、疑問に思った。だが、それでも私は支配人に盗まれた状況と金額を話し、相手は早口で「そのような話は従業員から聞いていない」と語った。

それから、私たちは再び外に出された。しばらくすると、支配人が仕事着を着た女を連れて戻ってきた。客室係だ。私たちは再び署長室に集められ、ソファに腰掛けた客室係は、私の部屋での仕事について語った。「毎朝、ゴミを捨てて、床を掃除して、ベッドを……トイレを……」

「昨日の担当は?」

「いえ、私ではなく、今日は休みです」

客室係の話が終わると、支配人が言った。「盗みなどありえません。誰も部屋に入れないのですから」

そして署長が私のほうを向いて言った。

「私はここにきて5年になるが、X ホテルでこんなことが起きたとは聞いたことがない」

私は、今日休んだ客室係のこととか、署長の耳の信頼度のことやら、いろいろなことを言いたかったが、我慢してこう言った。

「私が言いたいのは、ホテルで盗られたかどうかではなく……」

すると署長が口を挟んだ。「じゃあ、ホテルで盗まれたかどうかわからないというんだな!」 署長はこう言うと、両手でジェスチャーをしながら支配人のほうを「やれやれ、とんだ大騒ぎですな!」といった顔つきで見た。

だが、私は署長の曲解を訂正した。

「いいえ、そうではなく、ここで誰が盗んだかを議論したいのではなく、私はただ盗難証明書が欲しいのです! 保険! 補償!」