苦い文学

今日は行けません

気まずい思いをしながら、私は警察署内のベンチで待った。すると、さっきの警察が声をかけてきた。「30分後に戻ってこい」

私は外に出た。時間は7時45分だ。ラマダーン中なのでどこの喫茶店も開いていない。ハビブ・ブルギバ通りに出ると、中央の歩道に据えてあるベンチがあった。そこに座って、寒いなか待つことにする。

しかし、盗難証明書が出るまでどれくらいかかるのか。日本で紛失届をいくどか出したことがあるが、たいして時間はかからなかった。盗難届は日本でもそんなにすぐには終わらないだろうが、チュニジアではもっとかかりそうだ。だが、さっき警察署を見たかぎり、朝から人が詰めかけて列を作っているようではなかった。案外、すぐに終わるかもしれない。

私はその日の午前9時に人と会う約束があった。そこで、ベンチに座っている間に「10時に会うことにしたいのですが」とメッセージを送っておいた。

8時20分になった。私は再び警察署に行った。すると、今度は白いジャンパー姿の若い警察官が対応してくれた。事情を話すと、「なるほど。わかった。心配するな。1時間後に来い」

警察署を出た私は「すみません。今日は行けません」とメッセージを送った。