「アメリカを再び偉大にしよう!」と叫ぶ人々が立ち上がって、ひとりの男を再び玉座に舞い戻らせた。その名はドナルド・トランプ。そして、その日から、世界は偉大さを求めて熾烈に争うことになった。
トランプがカナダやグリーンランドに目をつけたのもそのせいだ。偉大さの埋蔵量が半端ないと踏んだのだ。
だが、偉大さにかけては中国だって負けてはいない。そもそもアメリカみたいに「偉大にしよう」だなんて言わない。「中国はいつも偉大ですが」とデーンと構えている。4000年の歴史で蓄えた偉大さをさらに増やすべく、現在、周辺海域を好き勝手に調査して、海水中の偉大さを濾過しようと計画中だ。
いっぽう、偉大さを手荒く補給しているのが、プーチンのロシア。ウクライナでの偉大さ特別獲得作戦のテコ入れのため、北朝鮮から新鮮な偉大さを輸入することに決めた。もっとも、北朝鮮の偉大さは、品質管理が悪いせいか、前線に着く頃にはだいぶ目減りしているという。
偉大さをめぐるこの過当競争のなか、厳しいのは日本のように限られた偉大資源しかない国だ。我が国はどう生き残るべきだろうか? 高い関税と金の兜を渡して、アメリカから輸入すべきだろうか? それとも、チャイナリスク覚悟で、中国と取引するか。いや、いっそのこと偉大さなどあきらめて、手痛い負けを喫する前にレースから降りるか……。
そっちのほうがじつは偉大かもしれない。