苦い文学

フローレス原人

今日、人類学の泰斗、ジェイムズ・シェルドン博士が来日した。博士は、フローレス原人(ホモ・フロレシエンシス)研究の世界的権威として知られる。

フローレス原人とは、インドネシアのフローレス島で化石が発見された小型の人類だ。推定によれば、身長は1メートル余りだったとされ、その発見は世界を驚かせた。

フローレス原人をめぐる最大の謎は、もともと小型の人類であったのか、それとも現生人類と同じサイズだったのが、フローレス島という特殊な環境により小型化したのか、という問題だ。後者の小型化説を主張するもっとも有力な研究者であるシェルドン博士は、都内のスーパーやコンビニを巡って、さらなる証拠集めを行う計画だ。

「ほら、見てください」とコンビニを訪問した博士は商品棚からシュークリームを取り上げる。「私は、約10年前にも来日したのですが、その頃より半分の大きさになっています。さらに(と精算前のシュークリームを半分に割る)内部のカスタードクリームは半分どころか3分の1になっているのです。もちろん、これだけではありません。ピザ、ドーナツ、パン、あらゆる食品がそうなっているのです」

博士は精算前のシュークリームに齧りつくと顔をしかめながら話を続けた。

「もし、経済的衰退により、商品の小型化が進み、それを摂取する日本人も環境の変化に適応して小型化しているとしたら、フローレス原人にも同じことが起きた可能性があるといえないでしょうか」

博士は今後、都内のコンビニやスーパーの店内に生息する日本人を捕捉し、体長の測定を実施する予定だ。