苦い文学

国立文楽劇場

3 年ぐらい前に平賀源内の『神霊矢口渡』をたまたま読んで以来、浄瑠璃を読み始めた。あまり本を読まないので、誰でも読んでいるもので読んでいないものがずいぶんあるが、近松門左衛門もそのひとつで、初めて読んでみて、その面白さに夢中になった。

それからも近松ばかりでなく有名なものを(ただし翻刻で)読み続けているが、一度くらいは、舞台を見てみようと思い立って、昨日と今日、国立文楽劇場の新春公演に行ってみた。

第 1 部は「新版歌祭文」、第 2 部は「仮名手本忠臣蔵」の八段目と九段目、第 3 部は「本朝廿四孝」だった。初めてではあるが、どれも楽しめた。また、当然のことながら、読んでいるだけではわからないこともたくさんあり興味深かった。

浄瑠璃で私が好きなのは、男女の恋よりも、過激だったり一癖あったりするババアやジジイが出てくるところだ。「新版歌祭文」ではそうしたジジイが出てきて私を喜ばせたが、「本朝廿四孝」では私好みのババアが出てくる三段目ではなく、四段目だったのは残念であった。

とはいえ、第四段の姫と白狐の「きつねダンス」は、これはもう舞台でなければというもので、ババアの穴を埋めるに十分であった。