苦い文学

日本最恐の神社

私は恐怖ハンター。日本中の心霊スポットを訪問して、YouTubeに動画をあげている。

今、私はとある山奥の古びた神社の中にいる。これほど邪気に満ちた地帯を私は知らない。緊急に動画を回そうとするが、撮影を始めたとたんに、動画が止められるのだ。

私は今追い詰められている。もしかしたら、もう二度と普通の世界に戻ることはできないかもしれない……。

「日本で最恐の神社がある」 そんな情報を得た私が、ここにやってきたのは、つい数時間前のことだ。だが、もう何ヶ月も前のような気がする!

その神社の入り口には血のように赤い鳥居があり、私はくぐり抜け、半ば崩れた石段を上がっていった。そして、その先には古びた手洗い場があった。そこの水はひどく汚れていた。私はさらに前進し、ついに神社の正面に立った。情報によればここがもっとも恐ろしい場所だという。

だが、そこはどこにでもありそうな作りだった。なんだ、と拍子抜けして振り向いた私は、自分の背後に立つ男を見て悲鳴を上げた。

そして、その禍々しい男は私に恐ろしい呪詛を投げかけてきたのだ。

「呪われよ! 神社のマナーがなっていない! 鳥居をくぐるときは一礼! 脇を歩け! お前はそれでも日本人か? 手水舎での作法もまったくなっていない! 二礼二拍手一礼も! 一からやり直しだ! できるまでお前を返さないぞ!」

ネッチネッチネッチネッチ、男は私をいたぶりつづける。私は殺されるだろう。呪いでも祟りでもなく、マナーに殺されるだろう……。