苦い文学

おいしい中華へ

ビルマのカレン人の友人が、一緒にご飯を食べようと誘ってくれた。高田馬場で待ち合わせだ。電話で話したときは、二つのお店の候補を挙げてくれた。しゃぶしゃぶの「しゃぶ葉」とビルマ料理の店だ。「しゃぶ葉」は、私にしてみれば、せっかく高田馬場まで来たのに……という感じ。しかも、あの配膳ロボットがイヤだな……。だが、ビルマ料理の店はカラオケがあってうるさいので、「しゃぶ葉」に覚悟を決めた。べつに味や肉が問題ではないのだ。ただ、あの配膳ロボットがな……

さて、ビッグボックスの前で会うと、友人が聞いてきた。「何がいいかな。ビルマ料理の店と、しゃぶしゃぶと……中華」

「中華がいいです」 この新たな候補に私は飛びついた。

「じゃあ、そこに行きましょう」と友人はどんどん歩いていく。「去年、行ったけど、おいしかったよ」

私たちはいくつもの中華を通り過ぎた。高田馬場だけあって、いわゆるガチ中華も多い。これらのどの店でもよさそうだが、そのどこも「あのおいしかった店」ではないのだ。その時、私の心に疑問が生じた。

そのおいしい中華とはバーミヤンでは?

いや、バーミヤンでもいいのだ。だが、それなら近所にあるし、しかも配膳ロボットが……

私の心配をよそに、友人はどんどん歩いていき、高田馬場のハズレの暗がりに入っていった。そして、その奥にガチ中華の灯りが輝いていたのだった。

「ここです」

これこれ! 高田馬場ならこういう店!

とテンションが上がるが、そのいっぽうで私は店内に目を光らせる。もしや、配膳ロボットが……いない、いるわけない。

私たちは店に入り、チャーシューや唐揚げや蜂の巣の和物などを注文した。だが、来るもの来るもの、友人は食べながら首を捻っている。「この前はおいしかったのにな……」「肉も固いし……」「遅いし……」

友人「焼きそば、まだですか」

非配膳ロボット「すぐです」

それでも来ない……

ついには私に「ごめんね」と謝る始末。

いえ、私はなんでもおいしくいただきますよ、ただ配膳ロボットさえいなければ……