私は貧弱で、みすぼらしい人間だ。いや、そうした外観でも、内面が自信に満ちていればいい。だが、私には誇るべきものも、金も地位もなにもなかった。私はこの国では最弱の人間なのだ。
だから、私は外に出るのが苦痛だ。人々は私を人間として扱ってくれない。舐めてかかってくる。舌打ちで威嚇されることなどざらだ。誰ひとり、私となると道など譲らない。悔しいが我慢するほかない。
もっともつらいのは、駅みたいに混雑する場所だ。人々は平気で私の邪魔をし、突き飛ばしていく。まるで、私など存在しないかのようだ。私は歯を食いしばりながら、懸命に歩いていく。それしかないのだ。
そして、今日、駅で、あまりに多くの人々に突き飛ばされたせいで、私は傷つき力尽きてしまった。立つこともできず、フラフラと倒れこむ。だが、そのとき、力強い手が私を引き上げ、抱きかかえた。見れば、警官が脇で支えてくれている。
「大丈夫ですか」と警官は言った。「ちょっとおいで願えませんか」
周囲では、人々が私に携帯を向けながら「ぶつかりおじさん」と罵っていた。どの顔も憎しみでいっぱいだった。