もうどれくらい経ったろうか。少なくとも三時間は経った。いや、数日、数週間、数ヶ月……私にはわからない。薬を飲まされるたびに、時間が恐ろしい速さで飛び去って行くようだ。
私はソファでずっと過ごす。ほとんど寝ているが、それでも待ち続けている。iPhone の修理が終わり、自分の名が呼ばれるのを。ああ、こんなことになるのならば、修理などに出さねばよかった。わずかなヒビなど放っておけばよかったのだ。私の家族はどうしていることだろうか。だが、家族などどうでもよい。私はただ iPhone に、ただ iPhone 16 Max Pro に会いたい。一目見て安心したい。
この待合室には、ときどき新しい人がやってくる。私は新入りを見つけるたびに、iPhone のことを聞く。ある者は iPhone 6 の修理待ちだ。またある者は iPhone 87 だと言った。私は気がついたのだ。私の iPhone 16 Max Pro などまったく最新ではないことに。そして、老人は iPhone 87 すら、古い方だと断言して憚らない。
「大きな戦争が終わる。その後に出たやつが私の聞いたうちではもっとも新しい」
私は尋ねる。「87 よりずっと後だというのならば、それは iPhone なになのですか。100 なのですか。どんな名前なのですか」
老人はずっと以前のことなので忘れたと言いながら、答える。「もう iPhone などという名前ではなかったな。サイボーグ? アンドロイド? みたいな……」