苦い文学

新しいサービス(6)

見ると、白髪の粗末な服を着た男が私のそばに立っているのだった。「戸惑っていらっしゃるようなので」

急に声をかけられて私はなんとなくイヤな気分になったが、平静に答えた。「ええ、ちょっと思っていたのと違うので」

「皆そうなのです。私も初めはそうでした。ですが、もう慣れました」

「そうですね。座って休めるだけ、ありがたいというものです」

「ときに、修理に出されている iPhone はなんですか?」

「16 Max Pro。最新のです」 私は胸を張って答えた。発売日に手に入れたと付け加えてもいいくらいだった。だが、老人はピンときていないようだった。

「ほほう。というと、何年のでしょうか」

「今年、いや、ほんの数ヶ月前のです」

「ええ、そうでしょう。ただ何年か知りたいのです」

「2024 年に決まっているでしょう」 私はこの老人が少しおかしいのだと気づき始めていた。会話を打ち切りたかったが、老人はそうさせなかった。

「2024 年! iPhone 16! なるほど。で、戦争は?」

「戦争? まだ続いていますよ」

「うーむ。これは面白い! なにしろニュースというものがここにはないので。あっても断片的で。ですので、新しく来られた方に聞くしかないのです。ちなみに、私が出しているのは iPhone 4 です」

「え、それはまた! ずいぶん使われたんですね!」

「いえ! いえ! それほどでもないです。あなたが思っていらっしゃるほどでは!」