見ると、白髪の粗末な服を着た男が私のそばに立っているのだった。「戸惑っていらっしゃるようなので」
急に声をかけられて私はなんとなくイヤな気分になったが、平静に答えた。「ええ、ちょっと思っていたのと違うので」
「皆そうなのです。私も初めはそうでした。ですが、もう慣れました」
「そうですね。座って休めるだけ、ありがたいというものです」
「ときに、修理に出されている iPhone はなんですか?」
「16 Max Pro。最新のです」 私は胸を張って答えた。発売日に手に入れたと付け加えてもいいくらいだった。だが、老人はピンときていないようだった。
「ほほう。というと、何年のでしょうか」
「今年、いや、ほんの数ヶ月前のです」
「ええ、そうでしょう。ただ何年か知りたいのです」
「2024 年に決まっているでしょう」 私はこの老人が少しおかしいのだと気づき始めていた。会話を打ち切りたかったが、老人はそうさせなかった。
「2024 年! iPhone 16! なるほど。で、戦争は?」
「戦争? まだ続いていますよ」
「うーむ。これは面白い! なにしろニュースというものがここにはないので。あっても断片的で。ですので、新しく来られた方に聞くしかないのです。ちなみに、私が出しているのは iPhone 4 です」
「え、それはまた! ずいぶん使われたんですね!」
「いえ! いえ! それほどでもないです。あなたが思っていらっしゃるほどでは!」