私は近くのソファに駆け寄ると、まるで飢えた人のようにテーブルの上の iPad を手に取った。Safari を開くと、すぐに Apple のサイトが出てきた。
だが、そこからどう操作しても、Apple の商品紹介以外のサイトに行けないのだった。私は手を伸ばして別の iPad も試してみた。しかし、まったく同じだった。iMac のあるデスクにも行ってみたが、やはりApple のロゴ以外の世界に進むことはできなかった。
私は紙コップにコーヒーを入れ、ソファに戻った。周りの人々を見回す。はじめに入ってきたとき、私はこれらの人々がそれぞれ広いネット世界に接続されているように思ったが、実はそうではなかった。よく見ると、ただ目を瞑っているか、ぼんやりと画面のリンゴを見つめているだけなのだった。
私はコーヒーを啜り、ため息をついた。確かに、ここはネットカフェではないのだからしょうがない。だが、いったい今、世界はどうなっているのだろう。この瞬間にどんなニュースが入ってきているのだろう。そして、自分の LINE とメールにどれだけのメッセージが送られてきているだろうか……そのすべてから遮断されていることに私はイラ立ちを感じ、再び大きなため息をついた。
すると、そのとき、背後から誰かが近づき、私に話しかけた。
「まだここに来られて間もないようですな」