エレベーターから降りると、目の前にはホテルのラウンジのような空間が広がっていた。白いレースのかかった窓からは穏やかな光が差し込み、ソファに座る人々を包み込んでいた。そこここにデスクが置かれ、人々はその上の iMac の画面を見つめている。ラウンジの中央には円形のテーブルがあり、その上にはコーヒーサーバー、水差し、ジュースの入った大きな瓶、スナックやお菓子が並べられていた。
「なんだ、初めからここにいればよかったのだ。なんであのスタッフは教えてくれなかったのだろう!」
もっとも、この素晴らしい待合室を前にして、私は怒る気も失せたのだった。そのとき、私の目の前に、スティーブ・ジョブズが忽然と現れた。
「お名前を……」 驚きを押し包みながら名乗ると、ジョブズ、いやもちろんジョブズにそっくりなスタッフは細い指で iPad を操り、私の名前を探りあてた。
「では、お荷物、貴重品をお預かりいたします」 彼が iPad を叩くと、小さなテーブルがスッと足元にやってきて止まった。「この上にお載せください」
私がショルダーバッグを置くと、テーブルの表面が輝き、その端からレシートのような長いテープを吐き出した。スタッフは屈んでそのテープをちぎり、私に差し出した。
「これを手首に巻いてください。お荷物お受け取りのさいに必要です」
私が巻きつけようとそれを左手首に当てると、ひとりでに巻きついて紙の腕輪になった。