苦い文学

クマの新しい駆除法

私たちの県では今、クマ被害が大問題になっている。クマが山から降りてきて、農作物を食べ荒らしたり、人々に危害を加えているのだ。犠牲者まで出ている。

はじめは猟友会が銃で仕留めていた。だが、お駄賃を渋ったら臍を曲げて引き上げてしまった。それ以来、私たちの地域は荒らされ、脅かされている。

そんな中、私たちの県知事がすばらしいアイディアを出した。「ドローンから落とした爆発物をクマに食べさせ、リモコンで腹の中で破裂させるのだ」

県は全力を上げて実用化に取りかかった。爆発物自体を作るのは簡単だった。問題は、それをどうクマに食べさせるかだった。研究者たちは県営動物園のクマを相手にいくども実験を繰り返した。おいしそうな匂いをつけたり、はちみつを塗ったり、生肉を巻きつけたり……どんなに工夫をしても、クマは食べないのだった。この作戦は失敗だった。

そして、先ほど県知事は、私たち県民に向けて新たな作戦を発表した。

「県は、人間が爆発物を飲み込んで、クマに食べられに行くのがいちばんだという結論に達した。マイナンバーの最後の数字が9の県民は全員、各市役所に来るように……」