今日、私は iPhone の修理のために、Apple Store に行った。スタッフに故障箇所を見せると、3 時間ほどかかるとのことだった。私はそれに同意し、iPhone をスタッフに渡した。
「もし今、電話をしたり、メッセージを送ったりなどあればどうぞ」
「いえ、とくに」
「修理が終わるまでの時間はどうされるご予定ですか?」
私は少し考えた。「外で散歩でもするつもりです」
「iPhone がないあいだ、お困りのことがあれば、Apple Store にどうぞおいでください」
私は Apple Store を出て、大通りを歩き始めた。天気はよく、気持ちよかった。三時間のあいだなにをしようか。映画でも見ようか。近くの映画館とプログラムを調べようとして私は iPhone を探し、すぐに修理に出していることに気がついた。
晴れていたが、ときどき冷たい風が吹いた。寒くなってきたので、私は喫茶店でしばらく時間を潰そうと思い立った。そして、喫茶店の前に立ったとき、私は iPhone がないということを思い出した。最近は財布を持ち歩かず、なんでも iPhone で支払っているのだった。
つまり、喫茶店で休むことも、何かを買うことも、電車移動もなにもできないのだ。これからこの3時間どうやって過ごせばいいのだろうか。あとどれくらい時間があるのだろうか? 今何時なのか? 私は時間を見ようと iPhone を探し、ないのを思い知った。
まるで大海原にたったひとりで漂っている遭難者のような気がしてきた。足の下の深淵に飲み込まれまいと、私は海面で必死にもがいているのだ。
恐怖が私をとらえた。パニックになり、息ができなくなった。私は大慌てで Apple Store に戻った。