苦い文学

ぽい捨て禁止

おい、そこのお前、ゴミを捨てちゃダメだろうが! 外せ外せ! イヤホンを。聞こえないふりするんじゃないよ。ゴミを捨てちゃダメだって言ってんの。

え? 「燃えるゴミ」って書いてあるって? そういう問題じゃないの。これだからバカは困る。その下を見てみろよ。なんて書いてある?

「ぽい捨て禁止」? だから、ちゃんとゴミ箱に捨てたじゃないかって? どうしようもないバカだよ、お前は。ろくに日本語も読めないのか。どういう教育受けてきたんだ。それとも外人か? よくみろよ、「ぽい捨て禁止」じゃないの、「っぽい捨て禁止」! 小さい「つ」が読めないんだから、呆れたね。

お前、音楽聴きながら歩いてたろ、なんだか知らねえが、どうせくだらねえ音楽だろ、リズムとりながら、みっともねえ。それでゴミ捨てる時、俺はちゃあんと見たんだよ。

ミュージシャンっぽい捨てしてた! まるで街中で撮影されたMVのワンシーンっぽい捨てしてた。このバカ野郎。さあ、お前はルールを破ったんだから罰金だ。見ろよ、「っぽい捨て禁止」の下に罰金5万円って書いてあるだろ。

さあ、払え。じゃなきゃお前を通報するぞ! え? なんの権利があって、だと? あのな、ここは俺の土地なの。俺がルールなの。そう警察からも許可取ってんの。だから、つべこべ言わず、5万円払いなさい。

なんだ? お前、その目は? そのゴミを、俺を疑ってるっぽい捨てした! ほんとだぞ! ほら、証明書だってある。あっ、待て、待て、引っ張るな! 俺のカバン! 俺の財布! ダメだ! 怒りっぽい捨てするな! やめろ! みんなが見てるっぽい捨てだぞ。とんだ荒っぽい捨てだ!

わかった、わかった。謝る。その笑いは? あっ、俺のカバンを丸ごと! おい、いたずらっぽい捨てするな!

はっ、どうやら覚悟を決めたっぽい捨てじゃないか。まさか、この俺を殺す気っぽい捨てでは……