苦い文学

北朝鮮の拉致問題

北朝鮮の拉致問題ほど私たちを怒らせるものはないのだ。被害者たちとその家族はどれだけ悲しい思いをしたことだろう、悔しかったことだろう。日本人がないがしろにされコケにされているのだ。しかし、政治家たちときたら、口先ばかりでいっこうに進捗なしだ。業を煮やした私たちはついに自分たちで政党を作った。日本のために尽くす本物のリーダーが率いる偉大なる政党だ。

私たちはこの偉大な政党が政権を取るためになんでもした。GHQ の押し付けた公職選挙法などなんの意味があろうか。力のあるものがありとあらゆる手段を使って勝つ、それだけが法だ。

そして、ついに偉大な政党の政権が樹立された。私たちはこの時から北朝鮮との、そしてその背後にいる中国とアメリカとの全面戦争に突入したのだ。

偉大な政党は必ず戦争に勝つ。だが、そのためには私たちは偉大な政党にすべてを捧げなくてはならない。私たちは財産と基本的人権をすべて政府に供出した! そして、日本に巣食うありとあらゆる敵を逮捕し、ガス室に送った! 偉大な日本の時代が始まったのだ。

そして今、偉大な日本で私たちは痩せ細り、餓死寸前だ。互いに憎み合っているから、力を合わせることもできない。軍人たちに殴られ通しで、いつもコブだらけだ。

「拉致被害者を取り戻す前に、日本人全員が北朝鮮に拉致されてしまった」

これが私たちの最新のジョークだ。