老後は、物価の安くて暖かい国でのんびり過ごせたら……そんな夢を抱いて日本への移住を決断したのは 68 歳の A さん。貯金と退職金は資金としても十分です。異国の地で何不自由ない生活が待っているはずでした。
しかし、思わぬ落とし穴が待ち受けています。
「なによりも大変だったのは現地の人との習慣の違いでした。時間に遅れると怒り出すし、野菜のこと(おそらく報連相のこと)ばかりいつも言っているし……道はゴミひとつないというのは評判の通りでしたが、歩いている人がみなゴミでした。それに、聞いていたよりもトイレも汚かったんです」(A さん)
ストレスフルな生活にさらに拍車をかけたのが、考え方の違いです。
「日本人は顔以外のことに関心がないのです。いつでも『あの人は顔が変わった』とか『整形だ』とか『メガネだ』とか言っています。ニュースもそんなニュースしかないのです」
そしてついに決定的なできごとが A さんの身に降りかかります。
「日本人はついに私の顔のことまで口を挟むようになったのです。『お顔の激変ぶりに唖然です』『ビジュに賛否ありそうですね』 もうたくさんです」
ついに帰国を決意した A さん。
「地球温暖化のおかげで気温も寒くないし、失われた 100 年のおかげで安く過ごせると思いましたが、やはり、安い国は安い国でした。移住の前に十分下調べをしておけば、と悔やまれます」と後悔しきりです。
今回の移住で、資金の一部を失った A さんですが、「安物買いの銭失いですが、安物だけあって大した損もしていないのが不幸中の幸いです」と、明るく語ってくれました。