苦い文学

サ行

サ行音について、しばしば「最近、舌足らずの発音をする人が増えた」という人がいる。どういうことかというと、英語の three や third の th で発音する人がいるというのだ。

「舌足らず」かどうかはともかく、そういう発音をする人がいるのは私も知っている。それどころか、日本語の教材の音声でも「これ、th では」という発音がある。

それはともかく、英語では s と th の区別は大事だが、日本語はそうではないので s を th で発音しても大して困らない。これが、th の発音の原因のひとつだろう。

th といえば、この音は f にも似ているのだという。three の th は舌と前歯の隙間を息が通過するときに出る音だし、いっぽう f は、前歯と下唇の隙間を息が通過するときの音だ。どちらも 歯と柔らかい部分(舌か唇)で作る音だから、似ているのだ。

そこで、私は考えた。もしも s を th で発音する人がいるのならば、さらに進んで、その th を f で発音する人もいるのではないか、と。

そんな矢先、先の衆院選で立憲民主党の枝野幸男さんがインタビューに答えているとき、私の鋭い耳ははっきりと捉えたのだった。

「実際に(じっふぁいに)」

ふぇいじかの発言だけに、重みがあるといえよう。