苦い文学

『リアルすぎる日本語』

これまでにない新たな視点を盛り込んだ日本語教科書『リアルな日本語(初級)』が刊行された。

日本の本当の姿を知ってもらおうという熱意に溢れた教材だ。通常、初級というと、文法・語彙ともに限定されているため、会話や読み物も現実の日本語から乖離したものになりがちであるが、『リアルな日本語』はそうならないための創意工夫に満ちている。

また、扱われるトピックも、きわめてリアルであるのも大きな特色だ。こうしたトピックは通常なら上級向けとされるが、それを大胆に、そして無理なく盛り込んでいるのにも感心させられる。全15課のうち、はじめの5課の内容を次に紹介しよう。

第1課 「私は満員電車の痴漢です」(日本語で自己紹介ができる)
第2課 「いいえ、パワハラ、セクハラ、ありません」(我慢ができる:その1)
第3課 「非正規労働の先に何がありますか」(道を尋ねることができる)
第4課 「日本人は弱いものいじめが好きですね」(趣味や職業について話すことができる)
第5課 「外国人は出て行きなさい」(我慢ができる:その2)

じつに有益な教科書であり、私もクラスで使用させてもらっている。ひとつ難点をいえば、教科書を最後まで終わらせることができないというのが問題だ。最初の数課で、日本語学習者が全員いなくなってしまうのだ。